• 新たな女性と出会いました。
    若くて綺麗な細身の女性です。
    彼女のアタックもかなり激しかったのですが、かわいらしさが前面に出ていたので心地良いものでした。
    勿論、いや、何が勿論なのか分かりませんが、彼女にも家庭がありました。

    どうやらバツイチ男は家庭持ち女の餌食になる運命にあるようです。
    彼女は料理も掃除も洗濯も苦手なようでしたが、週に1回か2回会って居酒屋に行くなど、ごく普通の付き合いをしていました。
    出会ってしばらくしてからホテルにも行きましたが、それもごく普通で自然な成り行きでした。
    彼女はとても気の付く女性で、僕は居心地の良い時間を過ごしました。
    だからといって再婚したいとまでは思わないというか、そもそも彼女にはダンナがいるのです。
    彼女のセックスは消極的でした。

    私はクリでないとイキにくいの、ごめんねと、一緒にイケなくてごめんなさいと謝りました。
    僕はまず彼女をイカせます。彼女はイクと挿入してくれと、イッた後に入れられると凄く感じるというので挿入しました。
    イッた余韻が残っているその間にどんどん動かすのが気持ちが良いようでした。
    なのでセックス自体もそれが自然で、時に彼女は挿入しながら自分でクリトリスを触って、一緒にイク事もありました。
    お互いの好き嫌いとか身体の具合とか、感じやすさや感じにくさなどを話せる仲でした。
    妻とはそんな話すらしたことがなかったので、妻よりも仲良しかも知れないと思ったほどです。
    妻と正反対に彼女は凄く濡れる人でした。
    あなたに会いに行くと思うだけで濡れちゃう、彼女がそう言っていたことがあります。
    それはセックスしたいから濡れるというのではなく、会いたい気持ちの高ぶりに身体が反応するのだと。
    彼女はやがてご主人と別居をはじめました。離婚話もでていたようですが、僕はそこまでは関知しませんでした。
    彼女が子供と暮らすようになり、僕は彼女の経済的面をサポートしました。

    出会った年の夏が過ぎ、冬が来て又夏になる、彼女とは随分長く付き合いました。
    お互いに一緒になろうと、言葉にこそ出さずにいましたが、そう思っていたこともありました。
    彼女の離婚はご主人が阻止していたようで、別居期間が長ければ調停に持ち込むことも出来るのだけれど、僕は言えませんでした。
    結婚なんて書類上のこと、この人とは妻以上に仲良しなのですからそれで良いと思いました。
    色々な所で美味しいものを食べ、旅行にも行き、僕たちは沢山の想い出を作りました。

    長く付き合っているからとマンネリになるでもなく、いつも新鮮な気持ちで彼女と向き合えたのです。
    彼女と出会って時が経ち、それは僕の結婚生活の年数をも超えました。
    彼女がいるのが当たり前で、セックスだって週に1度ペースでしていました。
    お互いに飽きたとか、つまらないと言うこともなく、一緒にテレビを見て笑ったり、温泉に出かけたりと楽しい日々だったのです。
    そんな平穏な日々が、あるとき突然崩れていくことになります。
    彼女は僕と別れてご主人の元に戻ると言ったのです。
    僕は彼女を愛していました。大好きでした。だから、その彼女がそう思ったのならば僕は我慢しなければいけないと思いました。

    僕は、彼女の荷物を彼女の部屋に運びました。
    彼女に理由をただすようなことはしませんでした。僕は男ですから、野暮なことは聞くまいと思いました。
    彼女だって僕のことを愛していたくれたと、そう信じています。
    その彼女が決断したことですから、僕の最後の全ての愛情を注いで、彼女の好きな道を行かせてあげたかった。

    一人になった僕はまさに抜け殻でした。
    彼女との思い出が頭から離れず、どうしようもない気持ちで落ち込んでいました。


    彼女からはたまにメールが来ました。
    しかしその文章に、その言葉の優しさに、僕は又寂しさがこみ上げてきました。
    僕は彼女に礼を言いました。彼女の女性として一番美しく輝いている時期を僕と一緒に過ごしてくれたことに対するお礼です。
    彼女は、独身のあなたを縛ってしまってごめんなさいと書いてきました。
    一緒になれなかったことを彼女は後悔しているのか、僕の人生の時間を無駄にしてしまったと思っているのか。
    僕は結婚などには拘ってなかったし、出来ればずっと一緒にいたいと思っていました。
    でも未練がましいことを書けば彼女は苦しむと思います。大丈夫だよ、新しい恋を見つけるからと強がってみました。

    男なんてそんなものですよね、意地を張って虚勢を張って、彼女の前では良い風を装いたいじゃないですか。
    新しい恋人でもみつけないとな、このまま寂しさの中に浸っていたらダメな男になりそうな気がします。
    だからといってスイッチを切り替えるようには行かないもので、街のカップルを見る度に彼女のことを思い出すのです。
    男は引きづりますよね、クールになんかなれやしない。
    それでも彼女のいない日が1ヶ月になり2ヶ月が過ぎ、徐々にそれが普通になってきました。
    勿論忘れられたのかと言えばウソになります。ウソになるどころか僕の頭の中は彼女との想い出でいっぱいなんです。

    そんな気持ちなのですから新しい恋に走るなんて出来ません。
    いえ、新たな何かを見つけなければとは思うのですが、一人でいるとどよよん感が増幅されきってハウリングまで起こしはじめる始末なのです。
    一人で車を飛ばしていても、ああ、ここも彼女と通ったなとどよよん感に満ちてしまいます。
    困ったヤツだぜ、オレって人間は。

    彼女のメールアドレスからメールが来ました。
    音沙汰が無くなって半年を過ぎた頃でした。
    何だろうと思って読んだ僕は凍りました。
    それは彼女の娘さんが送ってくれたものなのですが、文章は彼女が書いたもの。
    僕と別れた理由がそこには綴られていました。
    検診でがんが見つかり、進行性のもので治る可能性は少ないと言われたのだと書かれていました。
    自分の病気の姿は見せたくない、あなたの思い出には美しい私だけを、いつまでも置いて下さいと書かれていました。
    人間の一生が幸せだったかどうかは死ぬ間際に分かるってあなたは言ったよね、私は今それを実感しているの。あなたと出会えて幸せだったと。
    彼女と別れた時に、僕は泣きたいくらい寂しかった。でも男だから泣きはしませんでした。

    しかし彼女のこのメールを読んで、僕は泣きました。声を出して泣きました。
    今までの思いを全て涙に流すべく、こんなにも涙が出るのかと思うほど、僕は泣きました。
    泣くことしかできなかった。
    僕の心の中からいなくなった彼女は、本当は僕の心の中にいてくれたのだと分かりました。そして今、彼女は、彼女の肉体はなくなってしまった。

    彼女のメールにはこうも綴られていました。
    あなたは僕以上の人を見つけて、僕の分まで幸せになって下さいと。

    君以上の人など見つかるわけが無いじゃないか。
    しかし彼女は、絶対に良い人を見つけて、あなたが幸せになってくれることが最後の望みだと、そう書いてきたんです。
    返事を出しても決して届く事のないメール、そして今でも消す事の出来ない彼女からの最後のメッセージ。
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